「Weekend Blues」と“3つめの優しさ”

2005年11月13日日曜日

45_映画・音楽・読書

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haruhiko
中島春彦さんも「ぐゎんばりましょうよぉ~!!!」
今年の夏公開されたdygoもイチ押しの「運命じゃない人」がDVDで1/27に発売。
そしてなんといってもビッグなニュースは内田けんじ監督の伝説の自主制作作品「Weekend Blues」が同時発売されるってこと。これ、すごく面白いよ。ホントに。
劇場未公開の自主制作ビデオ作品なのにDVD化されたってことは、きっと「これは面白いから世に出すべきだ」と判断した偉い人たちがいたのかもね!
タランティーノの「パルプフィクション」の前には「レザボアドッグス」という名作があったように、「運命じゃない人」の前には「Weekend Blues」という名作があるので~す(言い過ぎ?)。
「運命じゃない人」は5人のストーリーを時制を組み替えて表現していたけど「Weekend Blues」では記憶喪失になった主人公が記憶を辿るので、これまた時制の組み替えあり。
でもね、「運命じゃない人」が5人の人生を多角度で描いているのに対して「Weekend Blues」は主人公が1人だからストーリー的にはシンプルでわかりやすいよ。
なんといっても主人公の山本健介を演じる中桐孝くんがめちゃくちゃいい味出しているので、すごく感情移入しやすい。彼が記憶をたどる過程では応援したくなるし、記憶を取り戻すシーンではかなり燃える。内田けんじ監督自身も健介の親友の健二という役を演じてます。
「運命じゃない人」で描かれていた宮田と神田の友情もよかったけど「Weekend Blues」の健介と健二の友情も笑わせます、泣かせます。
僕もインラインスケートに乗って後半あたりからちょこちょこと顔を出します。ヒゲはないけど髪がある。
「運命じゃない人」と「Weekend Blues」の両作品を見れば「あ、この人はこういう作品を作る人なのね」という理解が深まると同時に「この人もしかするとまだまだ隠し玉を持っているのでは…」という期待も感じることができるのではないでしょうか。
kick
「Weekend Blues」の撮影の裏話はたくさんあるけど、内田監督が今後メディアで語ることもあるだろうし、大人の事情もあるかもしれないのでここでは置いといて…。
そこで、撮影秘話でもなんでもない内田監督の素敵な一面を紹介しよう。
「Weekend Blues」の撮影も残りわずかとなった11月の週末のこと。
中延のマンションでの撮影が終わったのが夜の11時過ぎ。
内田監督と僕は途中まで帰り道が一緒だったので池上線で五反田へ。
内田監督がSONYのVX1000(カメラ)の入ったケースを持ち、僕がマイク用のブーム(マイクを取り付ける物干し竿みたいなやつ)を持っていた。
五反田に着き、JR乗り換えのための券売機の前に立つ。
荷物を足元に置いて切符を買っていた時、突然「ボガーン!!」というでっかい音が駅構内に響いた。見るとカメラの入ったケースが吹っ飛んで横にひっくり返っている。
何が起きたかというと、内田監督の隣の券売機にいた男(30歳前後の身なりのきちんとした身長180cmぐらいのけっこうカッコイイ男。V6のメンバーにいそうな感じ)がケースを思いっきり蹴っ飛ばしたのだ。
「おい、おめぇなにやってんだよ!」と、あの“超”温厚な内田監督が、10年の付き合いの中で初めて僕の前で怒った。そりゃ、命を削って作ってる作品のカメラ蹴られたらブチ切れて当然。
すると色男は謝るどころか
「あぁ? しんねーよ。つまずいただけだよ」
とケンカ腰で言い返す。
つまずいたなんてありえない。蹴る瞬間は見ていないが視界の隅には映っていた。ケースが置いてあったのは通り道ではなく券売機の下。ケースの形は縦と横幅がほぼ同じ長さなので、蹴っ飛ばさなきゃ倒れない。しかもありえない方向へは吹っ飛ばない。
一触即発。周りも騒然。
平和主義の僕も最悪の事態に備えてブームを強く握りしめた。「こーゆー時は振り降ろして殴るよりはまっすぐ腹を狙って突く方が当たるな…」なんて考えながら。
「すげー大事な物が入ってんだよ。てめぇなに考えてんだよ!」と内田監督。
「だからつまずいただけだって言ってんだろ!」と色男。
問題はこの次。怒り心頭そのままののテンションで内田監督がこう吠えた。
「おめぇ、どー考えても“つまずいた”じゃねぇだろぉが。おまえしっかり軸足立てて、めちゃくちゃ正しいフォームで足ふりきってたじゃねぇかぁ!」
これ、活字で伝わるかな~? 僕は彼の後ろで身構えながら笑ってしまった。憎たらしい相手にブチ切れた状態で「軸足立てて正しいフォーム」はないだろう。「ろくでなしBLUES」じゃないんだから。見ていた女子高生2人組も「正しいフォームだって…」と小声でつぶやき、くすりと笑う。
それが少し和ませるのに役立ったのかはしらないが、
「てめぇ謝れよ!」と続けた内田監督に対し、
色男が完全に逆切れモードで「あーわるかったなぁ!」と言って舌打ちしながら歩き去っていった。結局肉弾戦にはならずに済んだのでした。あ~よかった。
その後の山手線で僕は内田監督に言った。
「なんだよ、あいつ最低なやつだな。だけどけんちゃん、“正しいフォーム”はおかしいよ。あの状況でよくあんなボキャブラリー出るねぇ」
「あ~、あれね。なんか“どんな状況でも面白いこと言ってやる”みたいなのがクセになってるのかもしれないね。見てた女子高生もクスッと笑ってたし、俺自身“ちょっとうまいこと言ったな”と思って、逆にあそこでスーッと冷静になれたんだよね~」
やっぱりこの人、頭がおかしい。
笑えないほどのノイローゼ状態になりながら、人を笑わせるための脚本を深夜のジョナサンでひたすら書き直す強さ。
撮影中にスタッフ全員がテンパってる時にポーカーフェイスでポロっと面白いことを言って場を和ませる優しさ。
優しさ、と言えば、内田監督がこんなことを言っていた。
「“優しさ”っていろいろあってさ。目の前で若い女性がバナナの皮で転んだ時に、大丈夫ですか、と手を差し伸べるのも優しさだし、気づかないフリをしてあげるのも優しさだし…、あと、すかさずその横で彼女の何十倍も派手に転んであげるのも優しさだと思うんだよね…」
普通、最初の2つは出てきても最後の「より派手に転ぶ」ってのは意外と出てこない。言われりゃ「あーそうだ」と納得できるけどね。コロンブスの卵。
内田けんじのいいところは、この3つの優しさをうまく使い分ける能力、というか努力。そしてこの3つめの“派手に転んであげる優しさ”にこそ内田監督作品の“人を傷つけないユーモア”の真髄がある。
内田語録、恐るべし。本5冊ぐらいすぐにできるぜ。
dygology(dygo教)の教祖にして信者の僕ですが、このdygology自体、内田教の強い影響を受けています。昔の彼女に「あんた、あたしよりけんちゃんの方が好きなんでしょ?」と怒られたことがあります。すみません。
内田監督、僕らを楽しませるために今宵もジョナサンで苦しんでください。
常に応援してます。
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「Weekend Blues」
PFFアワード2002 企画賞(TBS賞)、ブリリアント賞(日活賞)受賞
監督・脚本・編集:内田けんじ
音楽:ミツ石橋
出演:中桐孝/熊沢麻衣子/横田大吾/内田けんじ

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