「アフタースクール」妄想を紡ぎ上げる努力の天才の最新作!

2008年4月28日月曜日

45_映画・音楽・読書

t f B! P L
FH000025_saigouyama_park
西郷山公園。春はカラフル心が弾む。
Olympus 35SPで撮影。
--------------------
内田けんじ監督の新作「アフタースクール」を見た。
(ストーリーのネタバレはないけど、最後の方で、作品の魅力については評論してるので、不安な人は読まないでね。)
この映画の話をする前に、まずは、オチのないウソ話をする。
今から5~6年前、映画好きの友人と新宿で映画(「トリプルX」だった気がする)を見に行った時のこと。
映画まではまだ時間があったし、その友人から「ロッテリアの2Fでコーヒーを飲んでいる」というメールがあったので、僕はそこに合流することにした。
ロッテリアの2Fに着くと、コーヒーを飲み終わり、セブンスターを吸う友人が待っていた。彼とは学生の頃からの映画友達で、もう10年以上の付き合い。
「ういーっす」と言いながら、バックパックを彼の目の前のイスに置き、「俺、テリヤキバーガーでも買ってくるわ。なんかいる?」と尋ねると、
「じゃ、コーヒー頼むわ。」と彼は答えた。
「オッケー」と、僕は1階に降りる。
ロッテリアは混んでいた。3~4列あるカウンターのすべてに10人ずつぐらい並んでいる。週末の新宿だから珍しくはない。まあ、10分ぐらいはかかるかな、と軽く思っていた。
だが、僕の列だけは事情が違った。1人で6~7人分をまとめて注文する客ばかりだったのだ。家族連れというよりは、何かの団体だったようだ。
隣の列はカップル(1~2人分オーダー)ばかりなのに、僕の列だけが団体(6~7人分オーダー)ばかりなので、手間取って列が全然進まない。僕とほぼ同時に隣の列に並んだ人たちは、もうとっくに注文を済ませてどこかに消えていた。
そして、僕がやっと注文を済ませた時、並び始めてから30分以上が経過していた。
もはやファーストフードではなくスローフード。
「ういーっす。お待たせ~。」と2階に戻った僕。
「dygoちゃんなにしてたの?」と友人。
「いや、テリヤキバーガーとコーヒー買ってきただけ。すげー混んでたんだよ。しかも俺の列だけ。」と僕。
「いやいや、バーガー買いに行っただけにしちゃ、ありえない長さでしょ(笑)。」と友人。
以上が「ロッテリアで友達を待たせて注文に行ったら、異常に混んでて30分ぐらいかかった」と、ひとことで説明できてしまうオチのないウソ話。
ウソの本題はここから。
友人がこう続けた。
「俺、このままdygoちゃんが戻ってこなかったらどうなるかな~なんて考えてたわ。何の前兆もなく“バーガー買ってくる”って行って、この目の前のバックパックを置いたまま失踪しちゃうの。そんで、俺が手がかりを探すためにバックパックを開けてみたらさ、俺の知っているdygoちゃんの性格や職業からは想像できないものが入ってたりしてね。まぁ、例えば銃とか、よくわかんない札束とか…何でもいいんだけど。で、最後にdygoちゃんを見た人は俺ってことになるら、警察にも事情を聞かれるとするよね。そしたら、俺は“dygoちゃんは学生時代からの親しい友人で、とても温厚でオシャレで頭も良くてハンサムで責任感もあって女にモテモテで、酒もタバコもギャンブルもやらなくて、都内で真面目なIT系会社員をやっています。僕は彼をよく知っていますけど、消える理由なんてまったく思い当たらないんですよ。悩みがあれば僕に話さないわけないし。”って、正直に説明するわけ。すると警察が、“え? dygoさんのことですよね? なんか違う人のこと話してませんか? 我々の調べたところによると、dygoさんはそんな会社には勤めてませんし、多額の借金抱えてますよ。傷害事件の前科もありますね。それに、近所の人たちともよく問題を起こすようで評判もあまり良くありませんね。”とか言われたりしてさ。そういうの怖くない? 自分がよく知っているはずの人間が、全然知らない人だったら。自分の持っているその人の情報と、他人の持っているその人の情報がまったく違うものだったりしたら。」
なるほど。この友人の妄想はいつも面白い。たかが「ロッテリアで注文に行った友達が、混んでいたために帰ってくるまで30分かかった」という、笑い話にもなり得ない出来事から、ここまで妄想が暴走するか。
さて、この一連の出来事だが、最近その友人がこの話を持ち出すまで、僕は完全に忘れていた。まあ当然だが。
むしろ僕が覚えていたのは、その時のロッテリアで、右斜め向こうに座っていた20代前半ぐらいの2人の女の子が、向き合って座ったままシクシク泣いていたことだ。この2人がケンカして泣いているのか、それとも何かの悲しみを2人で仲良く分かち合っているのか、まったくシチュエーションが読み取れなくてモヤモヤしたことが強く記憶に残っている。
話がそれた。戻ります。
では、なぜ彼が5~6年も経った今ごろ、そのロッテリアでの話を持ち出したのか?
それは、この時の妄想こそが、彼が脚本&監督を務めた最新作「アフタースクール」の着想となったからだ(と本人がインタビューで言っていた)。
これはネタバレでないのでご心配なく。このロッテリアのエピソードは映画のストーリーと一切関係ないので。ただ僕がちょっと自慢したかっただけ。
ロッテリアのエピソードに限らず、こういったオチのない小さな出来事から妄想を働かせ、それを丁寧に紡ぎ上げて作品として提供してくれる内田けんじ監督には今回も脱帽。
ストーリーのネタバレなしに今回の作品の魅力を言うならば「2回見るのがとても楽しい映画」。
前作の「運命じゃない人」の2回目は「あ~、あのシーンはこうなっていたのか」という、パズルの答え合わせの楽しさ。
「アフタースクール」の2回目は「あ~、このシーンにはこういう見方があったのか。こういう意味が込められていたのか」という、深い味わいへとつながる新発見の楽しさ。もしかすると、1回目で笑っていたシーンに、2回目ではホロリとくるかもしれない。
例えば「シックスセンス」を2回目に見た時、ブルース・ウィリスの奥さんのそっけない態度を、異なる角度から理解できるように。
ただ「運命じゃない人」みたいな、ガッチガチのパズルを期待すると肩透かしを食うかもね。謎はありつつも、テンションはゆるい感じで進むから。
あと、映画以前に、誰か特定の俳優(大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人の誰か)のファンだとして、その人の演じるキャラに肩入れして見始めると肩透かしを食うかも。どの俳優がどのような性格のキャラを演じていようとも、感情移入すべきキャラは微妙に変化する可能性があるので。
この「感情移入すべきキャラの揺らぎ」はこの映画の大きな特徴であり、諸刃の剣でもある。僕はこの微妙なバランス感覚が好きだったけど、人によっては感情移入のよりどころを失い、多少モヤモヤするかも。最後はもちろんスッキリするけどね。
もうひとつ特筆すべきは出演者たちの素晴らしさ。ミス・キャストなし!
まるで最初からこの俳優さんたちをイメージして脚本を書いたのではないか、とさえ思わせるジャストミートぶり。ちなみに内田けんじ監督は、特定の俳優をイメージして脚本を書いたわけではない、とインタビューで言っていた。
dygoの満足度:A(僕は100%内田監督びいきなので、僕の評価はあんまりアテにしないでね。)
全部ウソです。一般公開されたらあと3回は見に行くつもりなので、誰か僕と一緒に行きませんか?

自己紹介

自分の写真
11/21生まれのA型
美しいウソが大好物
笑う門には福来たる~♪

DYGOに応援メッセージを送る!

名前

メール *

メッセージ *

ウソを検索

積み上げたウソ

人気の投稿

QooQ